見つめる音の先には

音楽家/バリトン歌手 春日保人のブログ

レコーディング秘話②

この「ルーツ」というタイトルはたくさんの意味を込めました。

 

表向きは、「民族派」による作曲家の作品を集めたアルバムです。貴志康一は日本が西洋音楽を取り入れ、ヨーロッパに追いつけ追い越せとばかりに、猛烈な勢いで吸収していた頃、憧れでもあるベルリンフィルを前に、見事なまでの「日本」を西洋音楽の土台の元に花咲かせました。

 

また、早坂文雄は貧しい家庭の中で、独学に近い環境でピアノに触れ、映画音楽の中に生きる糧を見出しつつも、そこには常に純音楽たる思想を注ぎ込んだ人です。

 

そしてその環境は、どこかピアソラに似ているかも知れません。ピアソラもまた貧しい家庭環境の中、バンドネオンは好きになれないと思いながら生活の糧として演奏し、バッハ等に傾倒しつつも、結局はタンゴの中に自分を見出しました。

 

ファリャ。今回のアルバムの作曲家の中では、クラシックの音楽史に燦然たる名を刻んだ人ですが、その作風にはこれまでの歴史が築き上げてきた音響に対して、民族的要素と、新音響学を基盤として作曲をした人です。早坂文雄は、このファリャの作品を模範とし、研究していました。

 

これが一見バラバラに見える4人の作曲家における共通する部分です。

 

つづく…

f:id:yasutokasuga:20180519150756j:image

©︎Naoko Nagasawa